健康経営優良法人認定制度とはどのようなものですか?

健康経営優良法人認定制度は2014年から経済産業省の主導でスタートした制度です。

 

同省のHPの定義によれば「地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度」とされています。

 

なんだが小難しいですが、「従業員みんなで元気に長く働ける環境を整えている企業を認定する制度」と思っていただければOKです。

 

現在日本の企業は慢性的な人手不足に悩まされています。とりわけ中小企業の人手不足は深刻です。

 

誰かが体調を崩すなどしてリタイアすれば、それだけで会社が回らなくなるというところも少なくありません。

 

弊社は健康経営優良法人認定制度の中小規模法人部門がスタートした2017年に認定を取得。

 

さらに東京商工会議所が認定している健康経営エキスパートアドバイザーの資格を取得し、健康経営の導入支援サービスをスタートしました。

 

そのなかで感じているのが「今後日本では健康経営的な考え方が主流になる」ということです。

以下ではなぜそんなことが言えるのかを、健康経営優良法人認定制度の概要や取得のメリット、制度の現在と今後の展望を通じて見ていきましょう。

 


頭が痛い!

 

健康経営優良法人認定制度とは?

 

健康経営優良法人認定制度は「企業が人材面で抱えるジレンマを解決する糸口になる制度」だといえます。

 

2018年版の中小企業白書によれば、2013年第4四半期以降、全業種において「従業員が不足している」と答えた企業の割合が、「従業員が過剰」と答えた企業の割合を上回っています。

 

とりわけ、建設業とサービス業ではこの傾向がより顕著になります。こうした人手不足については、経営者のみなさんが痛いほど感じているのではないでしょうか。

 

人手が足りなければ、どうしても従業員一人ひとりに頑張ってもらわなければなりません。とりわけ優秀な人はみんなに頼られてしまうので、なおさらハードワークになりがちです。

 

すると寝る時間を削ったり、食事に気を遣わなくなったり、プレッシャーを感じてストレスを抱えてしまったりと、生活習慣病や精神疾患を発症するリスクがどんどん高くなっていきます。

 

会社の規模が小さくなるほど、従業員1人が抜けたときのダメージは大きくなりますから、「誰かが倒れて会社が回らなくなる」リスクもどんどん高くなります。

 

一生懸命頑張っても、会社が回らなくなれば意味がありません。そのためほとんどの

経営者は「本当は従業員には適度に休んでもらって、長く働いてもらいたい」と思っています。

 

 

とはいえ、ちゃんと休ませられるほど人手に余裕がないというのが多くの会社の現状でしょう。この「休んで欲しいけど休んでもらうわけにはいかない」というジレンマに苦しんでいる経営者は少なくないはずです。

 

健康経営優良法人認定制度を活用すれば、このジレンマからぬけだすきっかけをつかめます。

 

なぜなら健康経営は「ちゃんと休んで長く働ける環境を作る」ことと「しっかりと成果も出す」ことを両立するための経営手法であり、それができていなければ健康経営優良法人の認定を取得できないからです。

 

従業員が健康になって、生産性も上がる。しかも経済産業省の認定もついてくる。健康経営優良法人認定制度の活用はまさに一石三鳥の取り組みなのです。

 

「そんなウマい話が本当にあるの?」と思うかもしれません。でも心配はご無用。

 

私は健康経営エキスパートアドバイザーとして多くの会社の健康経営導入に携わるなかで、実際に人材面のジレンマが解決され、働き方が一変していくのを目の当たりにしてきました。

 

本気で会社を良くしたいという想いがあれば、健康経営の実現は十分可能なのです。

 

 

取得基準はありますか?

 

では健康経営優良法人の認定の可否は、具体的にどんな基準で判断されているのでしょうか。これについては経済産業省が一覧にまとめてくれているので、以下に引用しておきます。

 

引用元:経済産業省

 

このうち、初めにとりかかるべきは「1.経営理念(経営者の自覚)」の項目です。

 

評価項目の欄にある「健康宣言」をどれだけしっかりと作り込んでいるかが、それ以下の「2.組織体制」や「3.制度・施策実行」の成否に関わってくるからです。

 

・なぜ健康経営を導入しようと思ったのか?

・健康経営を導入して、どんな会社にしたいのか?

・自社の強みは何か?

・従業員が健康になったら、自社の強みはどのように強化されると思うか?

・経営者として、従業員にどうなって欲しいと思うか?

 

健康宣言は、経営者がこうした質問に自問自答したり、健康経営エキスパートアドバイザーのような立場の人間がヒアリングをしたりして練り上げていきます。

 

そうして健康宣言が完成したあと、「2.組織体制」や「3.制度・施策実行」といったより具体的な施策に取り組んでいくのです。

 

やってみるか!

 

対象になる法人

 

健康経営優良法人認定制度は「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」に分かれています。そのため全ての業種、全ての企業が認定を受けられる仕組みになっています。

 

なおここでの大規模法人とは、以下の条件を満たした法人を指します。

 

また下表の条件に当てはまる場合は、中小規模法人として認定の審査を受けることになります。

 

従業員数の条件は1人以上ですから、小さな事務所でも健康経営の導入は可能です。

 

 

取得するメリット

 

健康経営優良法人の認定は「一度取得すれば終わり」と言うものではありません。認定を維持し続けるためには、毎年の審査をパスする必要があります。

 

「毎年更新が必要なんて、手間がかかるなあ」と思うかもしれません。しかし健康経営優良法人の認定には、そのための手間をかけてでも取得する大きなメリットがあります。すなわち、

 

・採用力アップ

・退職率ダウン

・労働生産性の向上

・リスクマネジメント

 

の4つです。

 

中でも、最もわかりやすいメリットが採用力アップです。

 

認定を取得すれば「健康経営優良法人」のロゴを会社のホームページに掲載できますし、求人サイトなどでもアピールできるようになります。

 

弊社の場合、取得の前後で応募数が1.5倍に増加しました。残業の多い業界や肉体的・精神的にハードな業界では3〜4倍増加するケースも珍しくありません。

 

サービス残業や過重労働がニュースや新聞で取り上げられることで、仕事を探している人たちも「健康的に長く働きたい」という思いが高まっているのでしょう。

 

認定取得は退職率の引き下げにも効果を発揮してくれます。

 

アンケートなどでは「労働時間の長さ」「休日の少なさ」といった労働条件が退職理由としてよくあげられています。

 

でも、経営者として日々従業員と向き合っていれば、労働条件はそこまで深刻な要因ではないことがわかっているはずです。

 

従業員が退職を選択するもっとも基本的な理由は「しっかりした人間関係が築けていないこと」。抱えている悩みや本心を打ち明けられないのが辛くて辞めていくのです。

 

しかし健康経営が会社に浸透すれば、経営者や上司が仕事だけでなく、従業員一人ひとりの健康やプライベートのことまで気遣える文化が生まれます。

 

周りから「辛いのに我慢していないか?みんながいるんだから、いつでも頼っていいんだぞ」と言ってもらえる環境なら、多少残業が多い程度で「もう辞めてやる!」とはならないものです。

 

従業員同士が家族のように支え合い、自分たちの居場所を作る。それが健康経営の本質です。

 

だからこそ健康経営優良法人の認定を取得した会社では、退職率がダウンしていくのです。

 

認定を取得すれば、従業員の労働生産性アップも期待できます。

 

理屈は単純です。体に痛むところがあったり、心配事があったりすると仕事に集中できません。

 

逆に、どこも痛いところがなく、心配事もなければ仕事にしっかりと打ち込めるようになります。同じ能力の人が同じ時間働いた場合の成果は段違いでしょう。

 

実際2009年のアメリカの研究者たちが行った調査では、うつ病や不安障害、肥満などが労働生産性の低下と強く関係していることがわかっています。

 

2018年に日本で行われた調査では、健康リスクが高いほど労働生産性に強く影響する、と報告されています。

 

したがって、健康経営優良法人の認定取得を通じて従業員の健康が改善されれば労働生産性も向上するというのは、ある意味で必然なのです。

 

認定取得には会社としてのリスクマネジメント効果もあります。

 

 

会社は従業員が安心して働ける環境を整えなければならないという「安全配慮義務」を負っています(労働契約法 第5条)

 

もしこの義務に違反した場合は、従業員やその家族から訴えられ、多額の賠償金請求を受けるおそれがあります。

 

しかし健康経営優良法人の認定を取得するためには、安全配慮義務を果たす必要があるので、訴えられるリスクをあらかじめ抑えることができるのです。

 

 

応募が増えたよ!

 

健康経営優良法人を取得している企業数

 

こうしたメリットがあるため、健康経営優良法人の認定を取得している企業は、年々増加し続けています。

 

 

上のグラフは2017年から2019年までの健康経営優良法人の認定を取得した企業数の推移を示したものです。

 

2017年には235法人しかなかった大規模法人部門は、2019年には821法人と3倍以上に、318法人しかなかった中小規模法人部門は8倍を超える2,503法人に急増しています。

 

このことからも、認定取得の意義を感じてもらえるのではないでしょうか。

 

今後の健康経営優良法人取得予測

 

今後、健康経営優良法人認定制度を取得する企業は、急速に増えていくと考えています。人手不足がこれからさらに深刻になっていくからです。

 

日本の人口は今後50年で大きく減少していきます。

 

総務省が発表した「平成30年版 情報通信白書」では、2050年には1億人を切り、2063年には9,000万人を割り込むという試算が発表されています。

 

就労する女性や高齢者が増えたとしても、全体の人口が減れば労働人口は減少していくでしょう。

 

そうなれば人手不足は今以上に加速し、働き手にとって「働く場所なんていくらでもある」という状況ができあがります。

 

もし企業が従業員を大切にしなければ、彼らはさっさと転職してしまいます。

 

だからこそ健康経営優良法人の認定を取得して、従業員が元気に長く働きたいと思う環境を作ることがますます重要になるはずです。

 

まとめ

 

健康経営優良法人認定制度は運用が開始されてから、年々、存在感を増しています。この流れは今後も続くでしょう。

 

経営者自身を含め、会社のメンバーがどこかで無理をしていれば、いつ誰がダウンしてもおかしくありません。

 

頑張りすぎるのはたいてい真面目で優秀な中核メンバーですから、1人抜けるだけで会社が傾いてしまう可能性もあります。

 

そんな状況を回避するために、みなさんも健康経営優良法人の認定取得を目指してみてはいかがでしょうか。