健康経営アドバイザーが勧める 健康経営がよく解る本(書籍)ベスト6

「健康経営」という言葉をネットや雑誌で知り、いろいろと調べてみたものの、イマイチ全体像がつかめない。そんな人におすすめしたいのが、いろいろな人が出版している健康経営に関する本です。

弊社のブログや厚生労働省のホームページなどでも、健康経営に関する情報は手に入りますが、情報の広さ、深さを求めるのなら、やっぱり本が一番です。

そこで今日は、東京商工会議所認定の健康経営エキスパートアドバイザーから、おすすめの健康経営本を6冊ご紹介します。

 

 

人が集まる人が輝く 伸びる中小企業の健康経営 カサマ式実践の極意

1冊目に紹介するのは、健康経営エキスパートアドバイザーとして健康経営の導入サポートを行っている笠間氏が書いた本です。

 

本書で一番伝えたかったのは、健康経営の本質です。健康経営は、「採用力アップに役立つ」とか「労働生産性の改善に効果がある」といった文脈で語られがちです。

 

確かにそれも健康経営の一面です。

 

しかし健康経営の本質は、健康への意識を高めたり、実際に心身が健康になったりするにつれ、働く人がお互いの多様性を認め合い、家族のように支え合って1つの組織として効率的に活動できるようになっていくことだと、紹介しています。

 

この本質が伝わるように、専門用語は極力使わず、できるだけわかりやすい本を目指しました。

 

例えば、コンサルティングを行った企業の事例を豊富に入れることで、どんな施策を行えば、どんな効果が得られるのかがイメージしやすくなっています。

 

また健康経営を導入している企業の従業員の方へのインタビューを掲載し、現場の人たちの息遣いが感じられるようにもなっています。

 

見た目の読みやすさも重視しており、図表や写真を多用し、文字を大きく、文字数は少なめに抑えました。忙しい経営者の方に活用してもらえるように、パッと読んで、ビビッと理解でき、サッと実践できる、そんな本を作ったつもりです。

 

健康経営の始め方についても、実際にコンサルティングの現場で活用している「健康経営アンケート」や「健康経営宣言」を作るためのヒアリングシートを使いながら具体的に解説しています。

 

なので、健康経営を導入する際のビギナーズガイドとしても活用してもらえるはずです。

 

手前味噌ではありますが、健康経営の概要を把握したい人はもちろんのこと、「会社をレベルアップさせたい」「従業員に幸せになってほしい」と思う人に、ぜひとも手にとって欲しい一冊です。

 

 

日本一わかりやすい健康経営 −超人手不足社会でも会社が強く、元気になる初めての実践ガイド

著者の金城実氏は医師であり、一般社団法人日本予防医療協会代表理事も務める人物。そのため本書も予防医療の観点から、健康経営にフォーカスし、その必要性を説いたものになっています。

 

例えば「第三章 健康経営を成功させるには『予防医療』が不可欠」では、発症した病気を治す現在の「治療医学」の問題点を指摘し、症状を根本的に治す「予防医療」の重要性を解説しています。

 

また健康経営のための具体的な施策を紹介している項でも、著者自身の予防医療の知見をフル活用した具体策を挙げています。

 

そのうちの1つである「腕ふり体操」は、シンプルかつ効果的な運動として著者が考案したものです。2015年には『血液サラサラ、ボケない、ヤセる! 1日1分、腕振り健康法』という本まで出版しているので、著者肝いりのエクササイズと言えます。

 

他にも「バンザイストレッチ」というエクササイズや、「1日1食は伝統的な日本食を」「お風呂で代謝アップ、免疫力アップ」など食生活や生活習慣に関するアイデアも紹介しています。

 

とはいえ、本書は予防医療に関する内容ばかりの本ではありません。予防医療の考え方に立脚したアイデアを、どのようにして健康経営に落とし込み、社内に浸透させていくかについてもちゃんと解説してあります。

 

そのため社内に対して医学的・科学的な見地から健康経営の必要性をアピールしたい人や、予防医療の観点から効果のある施策を、うまく会社に浸透させていきたい人におすすめしたい一冊です。

 

 

改訂版 企業・健保担当者必携!! 成果の上がる健康経営の進め方

じっくり時間をかけて健康経営の意義や全体像を学びたい人、健康経営を導入するにしても、施策のコンセプトやPDCAのやり方などをきっちり決めてから動きたい人には、本書がおすすめです。

 

著者は産業医科大学の産業生体科学研究所で産業保険経営学の教授で、もともとは外資系石油会社の産業医として20年近く勤め、その後、働く人の生きがいと労働生産性の向上を目的とする「産業保健」の分野の研究者として活動してきた人物です。

 

本書はいわば「健康経営の専門家」が書いた本なのです。

 

そのためここまで紹介してきた2冊に比べて、非常に広い視点で健康経営について解説してくれています。

 

例えば「健康経営の目的と社会的価値」という項目では、健康経営を企業の社会的責任や、社会にもたらす経済的価値・社会的価値から検証し、なぜ健康経営が企業にとって必要なのかを解説しています。

 

健康経営の具体的施策を決める際にマーケティングの観点から職場のニーズを分析する、現場や人事部、産業医などが健康経営の実戦において連携し、うまく機能させるための「マネジメントシステム」を構築する、といったアプローチも専門家ならではです。

 

ただし、文章の難解さが玉にキズなのと、対象としている層が大企業なので、中小企業には必要のない情報もそれなりに入っています。

 

そのため中小企業の経営者や管理者が読む場合には、自分で情報を取捨選択する必要があります。

 

 

実践健康経営 健康的な働き方への組織改革の進め方

監査法人のデロイトトーマツのコンサルタント3人が共著で書いた本。3人のうち、折本敦子グレイス氏は実際に健康経営のサポートにも携わっているコンサルタントです。

 

『改訂版 企業・健保担当者必携!! 成果の上がる健康経営の進め方』と同じく、広い視野で健康経営を捉え、施策を組織全体に浸透させるための考え方や手順を解説していくという本です。ただし、本書は平易な表現で書かれているため、わかりやすいという人が多いかもしれません。

 

また「解説編」のあとに「ストーリー編」がつく構成になっているので、解説編での理解が定着しやすいのも魅力です。

 

第一線で働くコンサルタントが著者ということもあり、ローソンやロート製薬、伊藤忠商事など具体的な企業名を出しながら、健康経営の施策例やポイントを解説しているのも他の本にはない特徴です。

 

事例にあげられている企業名を見ると、いかにも大企業向けの本に思えるかもしれません。しかし、全体を見渡すと大企業もしくは中小企業に特化した内容というわけではなく、健康経営を導入する企業全般に向けた内容になっています。

 

健康経営に関する考え方や具体的な手順を、網羅的に理解したいという人におすすめの一冊です。

 

 

なぜ「健康経営」で会社が変わるのか判例から学ぶ、健康に配慮する企業が生き残る理由

企業名や団体名を出して判例を紹介しつつ、法律的な解釈や健康経営的な視点を解説している本今回紹介する6冊の中ではかなりユニークな切り口ですが、実際の判例をもとに話が展開していくので、非常に説得力のある一冊になっています。

 

例えば労働契約法第5条には、会社は従業員が安心して働ける環境を整えなければならないという「安全配慮義務」の定めがあります。本書はこのルールの法律上の解釈を、次のような判例をあげて解説していきます。

 

【事例1】システムコンサルタント事件

【事例2】三洋電機サービス事件

【事例3】NTT東日本事件

【事例4】東芝(うつ・解雇)事件

【事例5】ティー・エム・イーほか事件

※p95〜96より抜粋

 

知っている企業名が出てくると興味をそそられるので、自ずと各事件の解説も楽しんで読むことができます。

 

もちろん、単に「安全配慮義務に対する解釈は、こういったものがあります」という形で説明されても理解できないわけではありません。でも、やはり実在の事件に沿って解説してもらった方が腑に落ちると思います。

 

こんな情報が出せるのは、共著者の1人である山田長伸氏が、労働関係などの企業法務を専門とする弁護士だからでしょう。多少文体の硬さが気になる人もいるかもしれませんが、本を読み慣れている人ならそれほど苦労せずに読めてしまうはず。

 

従業員の健康上のトラブルが会社に対してもたらすリスクを理解したい人、また健康経営をそのリスクを軽減する施策として活用したい人には、ぜひとも一読をおすすめします。

 

 

この1冊ですべてがわかる健康経営実務必携

本書は社会保険労務士であり、健康経営アドバイザーでもある3人の社労士の方々の共著で、健康経営にまつわる情報を網羅的にまとめた本となっています。

 

最大の特徴は、事例とQ&Aが豊富な点です。

 

事例が紹介されているのは「第2章 明日からできる健康経営の実践!」で、事例の数は全部で6つ。しかもそれぞれ広告制作業やIT業などの業種と、従業員数や平均年齢が細かく記されているので、自社への応用がしやすくなっています。

 

また「正社員1名とパートタイマー2名を雇うことになったが、健康診断はどのように実施するべきか?」「社員がメンタルヘルス不調で休みがちになっており、近々休職の申し出があるかもしれない。会社としてはどう対応するべきか?」といった、非常に具体的なQ&Aが全部で25個もあるので、簡単なQ&A集としても活用できます。

 

健康経営関連の制度に紙幅を割いているのも、他の本にはない特徴です。

 

紹介されている、厚生労働省主催の「健康寿命をのばそう!アワード」や「安全衛生優良企業公表制度」、日本政策投資銀行の提供する「DBJ健康経営格付」融資などは、健康経営の導入を検討している企業なら、知っておいても損はないでしょう。

 

惜しい点をあげるとすれば、一つひとつの情報が十分に掘り下げられていない点です。そのため実際に健康経営を導入したり、制度を活用して経営に役立てたりするには、別の本を読むなどしてさらに一歩踏み込んだ勉強が必要です。

 

 

まとめ

一口に「健康経営に関する本」と言っても、ターゲットになっている読者やコンセプト、特徴は様々です。そのため1冊目として読む本は、できるだけ自分に合っていると思えるものがいいと思います。

 

1冊目で「健康経営のことはある程度わかったぞ」と思えてから、2冊目・3冊目に少し切り口の違うものを読むと、理解が深まり、知見が広がりやすくなります。すると実際に健康経営を自社に導入するときにも、いろいろと応用が効くようになるのです。

 

今回私から紹介した6冊が、みなさんが健康経営を理解する一助となれば幸いです。

書籍

Posted by kk@dmin